嘘をつくのは成長の証?絵本を使った正直さの土台作り

ありもしないことを作り話にして話す。絶対にやったのに「やってない!」という。親としてはちょっとショックを受ける子どもの嘘。そもそも、嘘をつくってどういうことなのか、発達科学の観点から調べてみました。

なぜ子どもは嘘をつくのか?

発達科学メモ

Evans, A. D., & Lee, K. (2013, Developmental Psychology)によると、嘘をつくという行動は、2歳以下の子供でも観察され、3-4歳で急増することが確認されているそうです。

嘘をつくということは、「他人が違うことを信じている」と理解できる必要があります。

「心の理論(Theory of Mind: ToM)」の働きによって、自分とは違う考えを他人が持っていると理解し始める、「自分と他人の頭の中は違う」と気づき始める発達の証拠なんだそうです。

自分が知っていることや見た現実を「お母さん・お父さんはまだ知らないはずだ」と想像して、自分の都合に合わせて事実を変えて伝えるという認知能力の芽生えが嘘をつくという行為として現れます。

「心の理論(Theory of Mind: ToM)」は以下の記事でも書いています。

お友達と仲良く遊べない子に読みたい絵本/「心の理論」の発達と他者の気持ちを想像する力
「お友達と遊べなくて、すぐ泣いて帰ってくる」「順番が守れない、貸してが言えない」。こんな悩みが増える時期は、「心の理論(Theory of Mind)」という認知能力が急発達する時期と重なるとされています。この記事では、他者の気持ちを理解す…

子どもの嘘とどう向き合うか

発達科学メモ

Talwar, V., & Lee, K. (2011)によると、嘘に対する処罰的な環境は、子どもの不誠実さを高めるそうです。

子どもが嘘をついた場合、嘘をついてしまったことを責めるのではなく、正直に言える環境をつくってあげることが、誠実さの発達には効果的なようです。

おすすめの絵本

発達科学メモ

「ピノッキオ」や「オオカミ少年」といった古典的な道徳の物語が子どもの正直さにどのように作用するかを研究したLee et al.(2014, Psychological Science)によると、こうした嘘をついた結果どうなってしまうかを強調した物語は、子どもの正直さを高める効果がなく、正直に言ったことを肯定的に描いた物語の方が有効だったそうです。

ごめんねともだち(内田麟太郎 作・降矢なな 絵/偕成社/2001年)

「おれたち、ともだち!」シリーズ4作目。オオカミとキツネが初めて大喧嘩をしてしまい、仲直りしたいのに「ごめんね」の一言が出てこないオオカミの心理を描いています。「心の中ならいえるのに」という描写が刺さります。

大人だってそうですが、謝るということの心理的なコストは子どもにとって高いものです。嘘をついてしまった後に正直に話すことも同じですね。

「言いたいのに言えない」という心の内側の葛藤を描いたこの絵本は、「自分もこんな感じ」だと子どもが自分自身に重ねやすいと思います。

オオカミがキツネとの関係性の中でやっと「ごめんね」を言える展開は、安心できる環境が子どもの誠実さを引き出すという発達科学の研究とリンクしています。

読み聞かせのポイント

「オオカミさん、どうして言えなかったのかな?」「言えたらどんなきもちだったかな?」と聞いてみましょう。「こんな気持ちになったことある?」と聞くこともできると思います。

コップをわったねずみくん(なかえよしを 作・上野紀子 絵/ポプラ社/1980年)

コップを割ってしまった大慌てのねずみくん、このままではおかあさんに叱られてしまう。「だれかのせいにすればよい!」と、ゾウさん、アシカくん、と次々に責任を転嫁していきます。

子どもが何かを壊してしまったときに「自分じゃない!」と言ってしまう場面は、多くの家庭で見られる光景だと思います。

この絵本は、そんな責任転嫁の場面から始まります。ユーモラスに描かれており、子どもが自分も似たようなことをしたことがあるかもと重ねやすいのではないでしょうか。

正直に話した方が結局うまくいくという納得を絵本を通じて子どもが体験できます。

しんせつなともだち(方軼羣 作・村山知義 絵・君島久子 訳/福音館書店/1987年)

うさぎが友達のために食べ物を届けようとする。親切は、周り巡って自分のところに戻ってくるというお話です。

嘘がテーマの絵本ではありませんが、正直さへの動機づけは「怒られないため」ではなく、「気持ちがよいから」の方が続くとされています。

この絵本は、親切にすることの喜びを体験することで、誠実に行動することが満足感をもたらすんだ、ということを先取りさせてくれるはずです。

参考文献

  • Evans, A. D., & Lee, K. (2013). Emergence of lying in very young children. Developmental Psychology, 49(10), 1958–1963
  • Lee, K. (2013). Little liars: Development of verbal deception in children. Child Development Perspectives, 7(2), 91–96.
  • Lee, K., Talwar, V., McCarthy, A., Ross, I., Evans, A., & Arruda, C. (2014). Can classic moral stories promote honesty in children? Psychological Science, 25(8), 1630–1636.
  • Talwar, V., & Lee, K. (2011). A punitive environment fosters children’s dishonesty: A natural experiment. Child Development, 82(6), 1751–1758.
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