お友達と仲良く遊べない子に読みたい絵本/「心の理論」の発達と他者の気持ちを想像する力

感情・行動の悩み


「お友達と遊べなくて、すぐ泣いて帰ってくる」「順番が守れない、貸してが言えない」。こんな悩みが増える時期は、「心の理論(Theory of Mind)」という認知能力が急発達する時期と重なるとされています。この記事では、他者の気持ちを理解する力がどう育つのかを発達科学で解説し、その発達を後押しする絵本を紹介します。

友達関係の発達科学/心の理論 (ToM)

発達科学メモ

「心の理論 (ToM)」とは、自分とは異なる感情・考え・意図を持っていることを理解する能力です。Wimmer & Perner(1983)が「false belief課題」でこの概念を実証的に検証して以来、発達科学分野でのテーマとなっています。

定型発達の子どもがこの能力を獲得する目安は4歳前後とされています。この能力を獲得する以前の子どもは、「自分のことは相手も知っている」と思い込む傾向があるそうです。

「貸して」と伝えることができないのは、意地悪したいのではなく、「相手が欲しがっている」という他者の感情をまだ正確に捉えることができないからなのかもしれません。

心の理論 (ToM)はそれ自体を直接訓練できるというものではなく、他者の気持ちを想像する経験の積み重ねでゆっくりと育っていくもので、絵本は、主人公の内面を繰り返し追体験できるという点で、この積み重ねに有効ではないでしょうか。

すぐに泣いちゃう子どもも同様です。まだ、感情の調整方法がわからない、友達関係のルールがわからない。どちらもまだまだ学習中のサインですね。焦らず着実に経験を積み重ねることが子どもの発達に寄り添うことができます。

おすすめの絵本

ともだちほしいな、おおかみくん(さくらともこ 作・いもとようこ 絵/岩崎書店/1986年)

「友達なんていらない」と思っていたオオカミくんが、不思議なクマと出会い、友情の意味を少しずつ学んでいく絵本。「友達ってどうやって作るの?」という疑問に正面から向き合っています。

友達関係の始まりは、「一緒にいたい」という感情からで、その最初のステップを主人公を通じて追体験できます。

「友達の作り方がわからない」は、「近づき方がわからない」だけで、友達を作る意欲がないわけではないと思います。絵本が近づき方の具体的なモデルを見せてくれます。

読み聞かせのポイント

読み終えたら、「オオカミくん、最後はどんな気持ちだったかな?」と聞いてあげてみてください。「うれしかった」「友達できてよかった」と答えたら、「そうだね、友達ができるとそんな気持ちになるんだね」と受け止めてあげましょう。

コッコさんのともだち(片山健 作/副音館書店/1991年)

保育園でひとりぼっちのコッコさん。なかなかみんなの輪に入れません。そんなコッコさんが先生の声がけをきっかけにお友達を作り、みんなと仲良くなっていくお話です。

友達の輪に入れない子どもは、入り方がわからない、断られるのが怖い、といった不安を抱いてことも多いです。積極的に動いたわけではなく、ただ同じ場所にいただけでも、友達は輪の中心にいなくてもできるんだよ、ということを伝えてくれる絵本です。

ともだちや(内田麟太郎 作・降矢なな 絵/偕成社/1998年)

1時間100円で友達になってあげる、「ともだちや」という商売を始めたキツネ。でも、やってきたオオカミは言います。お金をとるのは、ほんとの友達なの?

友達ってなんだろう?大人でもクリアに答えるのが難しい質問です。友達ができないと感じている背景には、そもそも、友達ってなんなのかよく分からない、という混乱も多いのではないでしょうか。

みんなと仲良くしなければならない、という過度なプレッシャーが、逆に子どもの友達関係をしんどくしちゃっていることもあるのかもしれません。

キツネとオオカミのやり取りを通じて、友達の意味をわかりやすく問い直している絵本です。

ともだちほしいな、おおかみくん(さくらともこ 作・いもとようこ 絵/岩崎書店/1986年)

人一倍友達が欲しいオオカミくん、気持ちがうまく伝わらず、誤解されたり、上手に関われない。友達は欲しいけれども「友達ってどうやって作るの?」という疑問に正面から向き合っている絵本です。

友達作りの始まりは、一緒にいたいという感情からで、その最初のステップを主人公を通じて擬似体験できます。相手の気持ちを想像すること、自分の気持ちを伝えること、そんな友達との関わり方を育むきっかけになると思います。

きみなんかだいきらいさ(ジャニス・メイ・ユードリー文・モーリス・センダック絵・小玉知子訳/冨山房/1975年)

仲良しのお友達ジェームスと大喧嘩した。もう口なんてきいてやるもんか。そう思っていたけれども、やっぱり気になって仕方ない。子どもの揺れ動く心を小さいサイズにぎゅっと詰め込んだ絵本です。

ケンカして謝れない子どもは、謝ったら負け、また怒られちゃうかも、といった不安があるからではないでしょうか。この絵本を通して、「けんかしたって関係は終わらない」という安心感を伝えることができます。

主人公が心の中で何度も「だいきらいさ」と繰り返しながら、結局相手のことが忘れられない、そんな正直さが響きます。

読み聞かせのポイント

実際にけんかをしちゃった子どもに、「この子、どんな気持ちだったと思う?」と聞いてみると、子どもが自分の気持ちを重ねて話してくれるかもしれません。解決を急がず、気持ちに名前をつけること(感情のラベリング)を見守ってあげましょう。

おこだでませんように(くすのきしげのり 文・石井聖岳 絵/小学館/2008年)

「ぼくはいつもおこられる」。いえでも学校でも、どうしてもおこられてしまう男の子が七夕の短冊に書いたお願いは「おこだでませんように」。

絵本の主人公は、悪い子ではなく、ただ衝動が先に来る子です。そんな主人公が「おこられたくない」と思っていることを知ったとき、大人はもう一度考えさせられます。もしかしたら、読み聞かせを通して、大人も気付かされる、そんな絵本です。

読み聞かせのポイント

すぐ泣く・すぐ怒る、というのは、感受性が高いということだと思います。「この子はなんで怒られたと思う?」と聞くのではなく、「この子はどんな気持ちだったと思う?」と聞いてあげると、子どもの気持ちが出やすいと思います。またやっちゃった、どうして自分はこんななんだろう、と自己否定に重ねてしまうのを避けつつ、寄り添える声かけがポイントです。


友達との関わり方は、経験を重ねながらゆっくり育っていきます。絵本を通じて、他者の気持ちを想像する体験を積み重ねてあげましょう。急かさず、否定せず、「安心して話せる場所(家)」を作ることが、外での一歩を踏み出す土台になるのではないでしょうか。

参考文献

  • Wimmer, H., & Perner, J. (1983). Beliefs about beliefs: Representation and constraining function of wrong beliefs in young children’s understanding of deception. Cognition, 13, 103-128.
  • Baron-Cohen, S., Leslie, A. M., & Frith, U. (1985). Does the autistic child have a “theory of mind”? Cognition, 21(1), 37-46.
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