「うちの子、同じ月齢の子に比べて言葉が少ない気がする」「検診で指摘されたわけじゃないんだけど、なんとなく心配」。言葉の発達には大きな個人差があって、ゆっくりと見守ってあげたいな。そんな子どもの成長を絵本の読み聞かせを通して後押しできたら良いなと思い、発達科学の観点から言葉が育つメカニズムと、それを踏まえた絵本の使い方を整理してみました。
「言葉が遅い?」の前に知っておきたい:発達科学が示す言葉の育ち方
1歳半〜2歳頃の言葉の発達には、かなり大きな個人差があります。同じ月齢でも2語文を話す子もいれば、単語が10個以下の子もいます。
「語彙爆発(vocabulary explosion)」
多くの子どもはそれまでゆっくりだった語彙の獲得が急加速する時期(「語彙爆発(vocabulary explosion)」)を1歳半〜2歳くらいの間に迎えるそうです。1歳半で約30語だったものが、2歳になると約300語と10倍になることもある。静かに見えても、脳の中では言葉をどんどん吸収していってるんですね。
「共同注意(joint attention)」
大人と子どもが同じものに一緒に注意を向ける体験(「共同注意(joint attention)」)は、言語発達の基盤になることが多くの研究で示されています。Morales et al. (2000)の研究によると、生後6-18ヶ月の共同注意への応答が、24-30ヶ月の語彙のサイズを予測することを示しています。指さしをしながら「ワンワン!」と声をかけ、親がそれに応答する。この積み重ねが言葉の習得を加速させていくんですね。
「オノマトペ(擬音語・擬態語)」
「ブーブー」「ワンワン」「もこもこ」のような繰り返し音は、子どもの脳が模倣しやすい音の構造を持っており、発語の入口として機能するようです。うちの子は、「もこもこ」の絵本がとっても大好きでした。1歳ころの子どもは、パ・バ・マ行(両唇音というそうです)が最も発音しやすく、オノマトペを多用することが発語を促すとされています。(ママと言わせよう、パパと言わせようと格闘したことをなんだか思い出してきました。)手を洗ってあげるときに「じゃあじゃあ」、お風呂で「バシャバシャ」と日常のふとしたところで取り入れることができます。
言葉の発達を促す絵本の条件
発達科学の知見をもとにすると、言葉の発達に有効な絵本には3つの特徴があります。
オノマトペ・繰り返し音が豊富
「じゃあじゃあ」「びりびり」「がたんごとん」のような繰り返し音が多い絵本は、子どもが声に出して真似しやすく、発語の入口になります。
「指さしができる」シンプルな絵
複雑な絵より、1ページに1〜2個の対象物が大きく描かれている絵本の方が共同注意を促しやすいです。
テンポが良く、短くても完結する
1〜2歳の集中持続時間は年齢×1〜2分程度なんだそうです。毎回同じ展開で「予測できる安心感」がある絵本が言葉の定着を助けます。
ひとつ補足すると、「教育的な絵本」より「子どもが喜ぶ絵本」の方が実際には効果的です。楽しいと感じる体験が繰り返されるほど、言葉は定着するそうです。
発達科学の観点からおすすめ絵本
じゃあじゃあびりびり(まついのりこ)
「みず じゃあじゃあじゃあ」「かみ びりびりびり」。身の回りのものの音をシンプルなオノマトペで表現した絵本。鮮やかな配色とリズミカルな言葉が特徴で、0歳から長く使えるロングセラーです。
「じゃあじゃあ」「びりびり」「ぶーぶーぶー」はすべて、子どもが最初に発音しやすい音の構造(繰り返し・両唇音・短音節)で構成されています。繰り返し読むことでオノマトペが自然に口から出るようになります。また、現実の音と絵本の音が一致する体験が描かれているので、お家でも水道をひねりながら「じゃあじゃあ」と再現することができます。
絵本を読みながら、実際に同じ音が出るものを見せてみてみるのはどうでしょうか。水道をひねりながら「じゃあじゃあ!」、紙を破きながら「びりびり!」。言葉の意味を自然と教えられます。
もこもこもこ(谷川俊太郎・元永定正)
「もこ」「にょき」「もこもこ」。意味のない(ように見える)言葉と抽象的な形が次々と出てくる不思議な絵本です。とてもシンプルな絵柄の絵本でこれで大丈夫かな?と思うかもしれません。なんだか不思議ですが、うちの子どもには大人気の絵本でした。
意味に縛られない言葉を聞くことは、言語の音韻認識(phonological awareness)を育てることにもつながるそうです。「もこっ」に正解はないですよね。「もこってどんな感じ?」「にょきって何が出てきそう?」と聞いてみて、子どもの答えを全力で受け止める。子どもが言葉で表現する喜びを育ててあげられそうな絵本です。
きんぎょがにげた(五味太郎)
金魚鉢から逃げ出した金魚を、ページをめくるたびに探す絵本です。「きんぎょ どこ?」という問いかけが繰り返される、シンプルながら子どもを夢中にさせる構成です。
「きんぎょ、どこ?」という問いかけは、共同注意を練習できる構造です。子どもが金魚を指さして「あった!」と言う瞬間が、まさに共同注意の発生です。「指さし+発語+大人の応答」というセットの繰り返しが発達科学で説明される言語発達の仕組みになっていますね。
「きんぎょ、どこにいるかな?」と聞いて、子どもが指をさしたらすぐに「そう!いたね!」と応答して、子どもの体験を完成させてみましょう。慣れてきたら「まだいるかな?次のページ、どこにいるかな?」と期待を膨らませてみるのも素敵ですね。
くだもの(平山和子)
りんご、みかん、ぶどう。様々な果物をリアルで美しい絵で描いた絵本です。語彙習得の研究では「具体物の名前(名詞)」が最初に習得されやすいことがわかっています。果物は子どもにとって身近で、実物と絵本の対応が取りやすいカテゴリです。絵本で「りんご」を覚えた子どもが、スーパーでりんごを見て「あ!」と反応する体験を通して語彙の定着を強化してくれると思います。実際に果物を食べる場面で「絵本のりんごと同じだね!」と結びつけるのもおすすめです。
だるまさんが(かがくいひろし)
「だ・る・ま・さ・ん・が……」のリズムとともに、だるまさんがドテっ、ぷしゅーと動く。予測と裏切りが赤ちゃんを笑わせる、ベストセラー絵本です。
「だ・る・ま・さ・ん・が」という一音ずつ区切る読み方は、音節認識(モーラ意識)の発達を促すとされています。「予測→裏切り→笑い」というサイクルは、社会的参照(大人の顔を見て反応を確認する)を活性化させ、笑いを通じて共同注意の基礎を作ってくれます。
「だ・る・ま・さ・ん・が……」の「が」のところで一瞬止めてみるのがおすすめです。子どもが次の展開を予測してニコニコし始めたら、そこで「ど・て・っ!」と言いながら自分も一緒に倒れてみると、いっぱい笑ってくれるはずです。
よくある疑問
Q. 読み聞かせの時、子どもが全然見てくれない・・・
無理に座らせて聞かせなくても、歩き回っていても耳は聞こえているはずです。「楽しい雰囲気の中で言葉を聞く体験」を積み重ねてあげられれば、子どもが興味を持ったページだけ読む、1ページだけ読む、という形でも絵本を読んであげられますね。
Q. テレビやYouTubeで言葉を覚えることはできる?
Tomasello(2003)によると、言語の習得は、他者と意図の共有を通じて起きるそうです。絵本は「問いかけ→応答→共同注意」のサイクルを自然と作ることができるため、どうしても画面からの一方通行の刺激になってしまいがちな動画よりも言語習得に優れているんだと思います。
まとめ
「子どもが声に出したくなる」「一緒に指さしたくなる」という要素を持った絵本を通じて、子どもの共同注意を促す読み聞かせで、一緒に楽しみながら語彙の発達を後押しできそうですね。
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参考文献
Morales, M., Mundy, P., Delgado, C. E. F., Yale, M., Messsinger, D., Neal, R., & Schwartz, H. K. (2000). Responding to joint attention across the 6- to 24-month age period and early language acquisition. Journal of Applied Developmental Psychology, 21(3), 283-2998.
Tomasello, M. (2003). Constructing a Language: A Usage-Based Theory of Language Acquisition. Harvard University Press.
