ことばの発達は、本当に子供によって個人差が大きいなと感じています。
1歳6ヶ月検診の問診票や母子手帳には、「意味あることばをいくつか話しますか」と書かれているのを見て思わず焦ったということも聞いたりします。
ワシントン大学のPatricia Kuhl(2004)の研究によると、乳児は生後6ヶ月から12ヶ月で母語の音韻知覚を特異化させるそうです。
研究結果でも幅があるように、同じ月齢の赤ちゃんでもタイミングには個人差があります。
そうだとすれば、「2歳だからこの絵本」という選び方をしてあげるのでもなく、今は指差し中心だからこの絵本が良いかな、2語文がぽんぽん出てきてるからこの絵本が良いかな?と考えてあげれば、もっと子供に響く素敵な絵本を選んであげられるんじゃないでしょうか。
そこで、この記事では、年齢ではなく「ことばの発達ステージ」で絵本を選ぶ方法を紹介してみたいと思います。まだ一人ではできないけれど、大人の手助けがあればできるかもしれない。今のステージに寄り添いつつ少し先を見せてあげるのに絵本の力を借りられれば、ことばを引き出すことができるのなと思っています。
記事のベースとしているのは、カナダのHanen Centre(言語療法の専門機関)が提唱する4段階の発達モデルに、発達障害児の早期介入で実績のあるEarly Start Denver Model(ESDM)と、コミュニケーション支援のSCERTSモデルの知見を組み合わせています。
今どのステージ?
※ステージの区分は厳密な診断基準ではありません。境界はあいまいで、同じ子が場面によって違うステージに見えることもあるはずです。気になる場合は地域の発達支援センターや言語聴覚士にご相談ください。
お子さんの(年齢ではなく)今の姿から、ステージの目安を見てみましょう。
- 名前を呼ぶと振り向く。声を出して何か伝えようとする →Stage 1(プレ言語期)の後半
- 「ワンワン」「ブーブー」など意味のある単語を使う → Stage 2 前半(初語レベル)
- 「ワンワン いた」「ママ ちょうだい」のように2語をつなげる → Stage 2 後半(2語文レベル)
- おっきい ワンワン いた」のように3〜4語をつなげて話す → Stage 3 前半(文法の芽生え)
- 「きょう保育園で○○ちゃんとあそんだ」と体験を文で話す → Stage 3 後半(会話発展期)
- ひらがなに興味を持ち始めた。自分で読もうとする → Stage 4(読み書き・抽象思考期)
Stage 1:プレ言語期
この時期の子どもの姿
「ママ」って言った!!「パパ」って言ってみて?何をしても可愛いお子さんを見ながら、そんなやり取りをされる時期かと思います。
音に反応して体を上下に動かしてみたり、何かを観察するようにこちらの顔をじっと見てみたり。気になるものを手当たり次第掴んで口に入れたりもすると思います。
Hanenの分類では、「Discoverer(発見者)」と呼ばれる段階にあたるそうです。ちょっとこっちをみて笑ってくれたと思ったら、一瞬で飽きておもちゃで遊び出す。人より物に興味が向きやすい時期ともされています。
そこから徐々にまるで「あれ見て!」「あれ取って!」って言ってるかのように指差しをして、身振り手振りで伝えようとする行動が見られるようになります。
ESDMでは、意図的な共同注意が発達する時期とされています。Rogers & Dawson(2010)は、この共同注意の経験の積み重ねが言語習得の土台になると述べています。
ことばかけのポイント
Hanenによると、この時期の子どもへのことばかけとして、OWL(Observe‒Wait‒Listen)というテクニックがあるそうです。
子どもの視線を観察し(Observe)、子どもが何かに注目するのを待ち(Wait)、子どもの声や動きに耳を傾ける(Listen)。子どもの「間」に合わせて、3つのステップを踏むのがOWLです。
子どもが犬をじっと見ていたら、「わんわん、いるね」、スプーンを落としたら、「スプーンが落ちたね、ことん」と言って拾う、そんなふれあいがOWLとされています。
Pepper & Weitzman(2004)の『It Takes Two to Talk』によると、こうした日常の中の声かけの繰り返しが、言葉に「意味のある音」があることを子どもに伝えると説明されています。
この段階に合う絵本の特徴
ページがシンプルで、1ページに描かれているものが1つか2つだと使いやすいと思います。食べ物、動物、乗り物など、子どもの日常にあるものが題材になっていたり、触れる仕掛けや音が出る仕掛けがあると、五感で「絵本」という体験に入りやすいのでおすすめです。
ページに描かれているものを指差しながら「わんわん」「ブーブー」と音をつけてみるのがおすすめです。
なんとなく、子どもの好みが見つかるかもしれません。じっと見つめるページがあれば、その絵について「おっきいねえ」「赤いね」と声をかけてみてはどうでしょうか。
もしかして途中で飽きて他のおもちゃで遊び始めてしまうかもしれませんが、子どもとお話しするおもちゃの1つくらいの感覚で読み聞かせてみましょう。
じゃあじゃあびりびり/まついのりこ/偕成社(1983年)
1ページにひとつのアイテムと擬音、「じどうしゃ ぶーぶーぶーぶー」「いぬ わんわんわんわん」との子どもが絵を見ながら音を楽しむのにぴったりです。
いないいないばあ/松谷みよ子(文)・瀬川康男(絵)/童心社(1967年)
いないいないばあって子どもを笑顔にしてくれますよね。めくった瞬間の「ばあ!」を合図にお子さんも声を出してくれるかもしれません。
この段階でよくある不安
一つ一つが可愛いけれど、まだ言葉が出ないな。。。どうしても気になる話題だと思います。まだ言葉が出ていなくても、指さしや身振りで伝えようとしているなら、コミュニケーションの土台は育っているはずです。
気になる方は、言葉の発達をテーマにした記事も書いていますのでチェックしてみてください。

次のステージへのサイン
意味のある単語が1〜2個出始める。大人が言った言葉を繰り返そうとする(不完全でもOK)。指さしで「あれ取って」を明確に伝えるようになる。こうした行動が見えてきたら、Stage 2に移行しつつあるサインです。
Stage 2:初語〜2語文期
この時期の子どもの姿
ある日、子どもの口から「ママ」「ワンワン」「ブーブー」が次々と出てくるようになります。18ヶ月から2歳頃にかけてよく見られる「語彙爆発(vocabulary spurt)」とされる事象です。Hanenの分類ではFirst Words User(初語使用者)にあたります。
そのうち、単語を2つつなげ始めるのではないでしょうか。HanenでいうCombiner(組み合わせ期)にあたり、「ワンワン いた」「ジュース ちょうだい」というように単語と単語を結びつけ始めます。
ここで注意したいのは、同じように単語を2つ話していても、単語を1つずつ言っている段階と、2語をつなげている段階では、合う絵本がかなり違うということです。このため、Stage 2は前半と後半に分けて考えたほうがいいと思います。
SCERTSモデルによると、「情動調整」(自分の感情を認識し、状況に応じて適切に表現・調整する能力)が課題になる時期でもあるそうです(Prizant et al., 2006)。
自分の気持ちを言葉で表現する力が、感情のコントロールに直接つながっていて、伝わらない苛立ちから癇癪が起きやすいのも、この段階の特徴のようです。
ことばかけのポイント
前半(初語レベル:単語を1つずつ言っている段階)では、子どもが見ているものに名前をつけてあげましょう。子どもが りんごを指さしたら「りんご。赤いりんごだね」。子どもの注目に合わせて1語ずつ、はっきりとお話するイメージです。
後半(2語文レベル:2語をつなげている段階)になったら、子どもが言った単語を「広げる」ことを意識してみましょう。子どもが「ワンワン」と言ったら、「ワンワンいたね。大きいワンワンだね」と返す。子どもの1語を2〜3語に広げて返すだけで、次のステップの言語モデルを自然に提示できる形になります。
選択肢を2つ出すのも効果的だと思います。YES/NOでお話をするのではなく、「りんごにする? バナナにする?」と聞いてあげることで、子どもが単語を使って答える場面を生むことができます。
Hart & Risley(1995)が報告した「3,000万語の格差」では、この時期に語彙の格差が広がり始めるとされています。この報告は、家庭で聞く語彙の量と質が3歳時点の語彙力と相関していたというものです。
※ただ、どこまで一般化してよい研究なのかについて、近年議論があり、語の量だけでなくやりとりの質を重視する見方が主流になりつつあるようです。
Massaro(2015, Journal of Literacy Research)の報告では、絵本には日常会話の2〜3倍の低頻度語彙が含まれていることが指摘されています。普段の会話では出てこない言葉に触れる機会として、絵本の読み聞かせには独自の役割があるようです。たしかに、日常会話では意識しないと意外に狭い言葉だけを使ってお話しているのかもしれませんね。
Stage2前半(初語レベル:単語を1つずつ言っている段階)の絵本
まだ単語を1つずつ口にする段階(「ワンワン」「ブーブー」「バナナ」)ですので、1ページに1つの対象がはっきり描かれていて、子どもがその名前を声に出すきっかけになるものがおすすめです。
絵本の選び方
しかけ絵本のように、めくったら何かが出てくる構造は、子どもの期待感を高めて「声を出したい」気持ちを誘いそうです。絵が大きく、色がはっきりしていて、子どもが知っている対象(果物、動物、乗り物)が描かれているものだとお話しやすいですね。文字は少なめで、親が絵を見ながら自由に声をかけられる余白がある絵本だと使いやすいと思います。
しかけをめくる前に「なにかな?」と間をあけましょう。子どもが何か声を出したら(正解でなくても)「そうだね!」と受け止めてあげてみてください。子どもが出した音をそのまま繰り返してあげるだけでも、「自分の声が届いた」という経験になると思います。
くだものさん/tupera tupera作/学研プラス(2010)
葉っぱのしかけをめくると「すっぽーん」と果物が現れます。りんご、みかん、ぶどう、子どもが知っている果物の名前を、めくる動作と一緒に声に出せる絵本です。1語ずつ反応できる構造が、初語レベルにぴったりです。同シリーズ『やさいさん』も同じように使えます。
たまごのえほん/いしかわこうじ著・絵/童心社(2008)
たまごの殻をめくると、中からひよこ、かめ、ペンギンなどが出てきます。「ぴよぴよ」「がおー」と動物の声を擬音で楽しめる絵本です。しかけをめくるワクワク感と、出てきた動物に名前をつける体験がセットになっています。
Stage 2 後半:2語文レベル(2語をつなげている段階)の絵本
「ワンワン いた」「パパ きた」のように、2つの言葉を組み合わせ始めた段階で、単語を1つ出すだけではなく、「誰が」「どうした」や「何が」「どこに」をつなげようとしているはずです。この時期に合う絵本は、子どもが2語で答えたくなるような問いかけを含んでいるものがおすすめです。
絵本の選び方
「○○はどこ?」「○○のうしろにいるのだあれ?」のように、2語以上の応答を自然に引き出す構造を持つ絵本が使いやすいと思います。繰り返しフレーズがあると、子どもが次の展開を予測して先に言おうとするので、その「先に言えた!」が言葉を使う喜びにつなげられますね。感情を表す言葉(「うれしい」「いやだ」)が出てくる絵本もこの段階だと、効果的かもしれません。
読み聞かせのコツ
絵を指さしながら「これなに?」と聞いてみましょう。子どもが「きんぎょ」と答えたら、「きんぎょ、にげたね」と2語文に広げて返してみる。繰り返しフレーズのところでは、わざと「間」をあけて、子どもに続きを言わせてみる。そんな使い方がおすすめです。
絵本を読み終えたら「さっきの絵本みたいに、おかたづけしようか」みたいに、絵本の場面を日常でも使ってあげると良いですね。
うしろにいるのだあれ/accototo(ふくだとしお・あきこ)作/幻冬舎(2008)
「うしろにいるのだあれ」と問いかけるたびに、新しい動物が登場します。「ぞうさん!」「かめさん!」と子どもが答えるうち、自然と「うしろに」「いるの」「だあれ」という構文を繰り返し聞くことになる、2語の応答を促す自然な仕掛けが特徴の絵本です。
きんぎょがにげた/五味太郎作/福音館書店(1982)
「きんぎょがにげた」「どこににげた」。ページごとに金魚を探します。「ここ!」から「ここにいた!」「あっちにいった!」と、1語から2語へと応答が自然に発展していきます。指さしと言葉が同時に出てくる絵本です。
この段階でよくある不安
やっぱり気になってしまうのは、世の中の目安だと思います。「2歳半なのにまだ2語文が出ないな」、大好きなお子さんのことだからこそ、心配なのは当然です。語彙爆発の時期は、子どもによって、半年以上もずれてくることがあるそうです。言葉が出ないかわりに感情が先に出ることもある点については、以下の記事も書いています。

→ 関連記事:叩く・噌むが気になるときの絵本5冊(執筆予定です!!)
次のステージへのサイン
2語文でも、お話しているなと嬉しくなると思います。そんな子どもが次のステージに向けて、3語以上つなげて話し始めたり(「おっきい ワンワン いた」)、動詞を使い分けるようになったり(「食べる」「行く」「やだ」)、「なんで?」「どうして?」の質問したりなるようです。
Stage 3:会話発展期
この時期の子どもの姿
このステージに入ってくると、子どもは、3語、4語と言葉をつなげて文を作り始めます。「ママ、あのね、きょうね、○○くんがね……」。文法的にはまだ不完全でも、伝えたい気持ちが言葉を押し出してきているのでしょうね。
SCERTSでは、「会話パートナー段階」に入るとされていますが、この中にも2つのレベルがあるとされています。前半は文法の組み立てが始まった段階。「大きいワンワンがいた」のように、形容詞+名詞+動詞をつなげるようになる。後半になると、相手の話題に沿ってやりとりを続けられるようになる。「それでどうなったの?」と聞かれて、話を展開できる。
「なんで空は青いの?」「なんでお月さまはついてくるの?」。質問攻めが始まるのもこの時期とされています。キラキラして目で質問してきていて、とっても可愛いけど、正直親としてはしんどくなっちゃうかもしれないですね。この「なぜ?」は、知識を求めているだけではなく、「大人と会話を続けたい」という動機の表れだと思うと少しだけ楽になれるかもしれません。
この時期に芽生え始めるのが「心の理論(Theory of Mind)」、他人の心を推測し、理解しようとする能力です。他者が自分とは違う気持ちを持っていることに気づき始めるようです。成人を対象にした研究ではありますが、Maret al.(2006, Journal of Research in Personality)では、物語との接触が他者の視点を理解することと関連することが示されています。絵本を通じた物語体験を積み重ねることが、この力を高める基盤になると考えられているようです。
嘘をつき始めるのもこの時期とされています。嘘をつくには「相手が知らないことを自分は知っている」という認知が必要になります。親としてはちょっと困っちゃうけれど、発達の証拠でもあるようです。
ことばかけのポイント
前半(文法の組み立てが始まった時期)では、子どもが言った短い文を少しだけ広げて返してあげましょう。子どもが「ワンワン いた」と言ったら、「大きいワンワンがいたね。走ってたね」。文法的に正しい文を自然に聞かせることが、次のステップのモデルになっていきます。
後半(会話の発展が始まった時期)では、子どもの話に「それでどうなったの?」と先を聞いてあげましょう。感情ラベリングも意識しつつ、子どもが泣いているときは「悔しかったんだね」、怒っているとき「思い通りにいかなくてイライラしちゃったんだね」。気持ちに名前をつけてもらう経験が、感情の調整力につながるようです。
「なんで?」に全部答えなくても、「○○ちゃんはなんでだと思う?」と返してあげれば、子ども自身が考えて言葉にする練習につながっていきます。
Stage 3 前半:文法が芽生える段階の絵本と読み方
3〜4語をつなげて文を作り始めた段階ですので、「おっきい バス きた」「ママ おしごと いった」。文法はまだ不完全だけれど、言葉で場面を描写しようとしているのを手助けできる絵本がおすすめです。
絵本の選び方
短い文がリズミカルに繰り返される絵本がぴったりです。同じ構文が何度も出てくることで、子どもが文のパターンを自然に吸収できますね。対比構造(「よかった」/「でもたいへん」など)があると、話の展開を予測しやすく、「次はどっちだろう?」と声に出したくなるのではないでしょうか。1ページの文量は3〜4文くらいが使いやすいと思います。
読み聞かせのコツ
繰り返し構文のところで、わざと間をあけて子どもに言わせてみましょう。「よかったね……」と読んで、子どもが「ネッドくん!」と続ける。文の一部を自分の口で完成させる体験を通じて、文法の感覚を育てることができると思います。
読んだ後に、絵本と同じ構文を日常で使ってみるのはどうでしょう。「よかったね、○○ちゃん。でもたいへん、雨がふってきたね」。絵本の言葉が生活に溶け込んで、素敵なルーティンができます。
よかったねネッドくん/レミー・チャーリップ 著 / 偕成社(1997)
「よかったね、ネッドくん。パーティーにしょうたいされました」「でもたいへん。パーティーはとおいところでした」。ページごとに「よかった」と「たいへん」が交互に来ます。子どもは展開を予測して、次が「よかった」か「たいへん」か当てようとします。対比構造の繰り返しが、文法パターンの吸収にぴったりな絵本です。
ぐりとぐら/中川李枝子 ・大村百合子 著 / 福音館書店(1967)
森で大きな卵を見つけた2匹のねずみが、相談しながらカステラを作ります。起承転結が明確で、短い文が続くので、この段階の子どもが物語の流れを追いやすいと思います。「このよで いちばん すきなのは おりょうりすること たべること」のリズムが耳に残りますね。「次はどうするかな?」と予測を促しやすい構造です。
Stage 3 後半:会話がつながる段階の絵本と読み方
「きょう保育園でね、○○くんがね、砂場でね、お山つくったの。でもね、こわしちゃったの」。体験を時系列で語れるようになってきた段階です。相手の質問に沿って話を展開できるようになります。友達との会話も成立し始めるが、もしかしたら、ちょっと喧嘩しちゃったりトラブルも増える時期かもしれません。
絵本の選び方
複数の登場人物がいて、それぞれに役割や感情がある物語がおすすめです。対話が含まれている絵本は、子ども自身の会話力と重なりやすく、「もしも〜だったら」という仮定を含む話は、この段階の想像力を刺激するのではないでしょうか。
読み聞かせのコツ
読んだ後に「○○(キャラクター名)はどんな気持ちだったかな?」と聞いてみましょう。答えが「かなしい」でも「わかんない」でもよくて、子どもが考える練習につなげらます。
子ども自身の経験と絵本の場面を結びつけられるかもしれません。「○○ちゃんも公園で似たことあったよね」。物語と現実がつながる瞬間が、理解を深めていくと思います。
ぎろろんやまと10ぴきのかえる/間所ひさこ 著/ 仲川道子 絵 / PHP研究所(1992)
10匹のかえるが「ぎろろんやま」に冒険に出かけるお話です。それぞれのかえるに個性があり、協力しながら困難を乗り越えていく。登場人物同士のやりとりの流れを追う力が求められます。「なんであのかえるはああしたのかな?」と、行動の理由を考える問いかけに使いやすい絵本です。シリーズで10冊以上あるので、お子さんが気に入ったら広げていくこともできます。
はじめてのおつかい/筒井頼子 著 / 林明子 絵 / 福音館書店(1977)
5歳のみいちゃんが一人で牛乳を買いに行きます。転んだり、声が出なかったり、車が通ったりする場面で、子どもが「こわいね」「がんばれ」と感情移入できると思います。みいちゃんの気持ちの変化を追いながら、会話の中で「○○ちゃんだったらどうする?」と考えさせられる絵本です。
次のステージへのサイン
ひらがなに興味を持ち始めると次のステージへのサインのようです。お散歩しながら、電車やバスの中から、看板や食品パッケージの文字を読もうとする。自分で絵本を「読む」ふりをする。「ずるい」「公平じゃない」のような抽象的な概念を言葉にし始める時期でもあるそうです。
Stage 4:読み書き・抽象思考期
この時期の子どもの姿
ひらがなを読み始める子がいる一方で、まだ文字に興味がない子もいるようです。文字への関心が芽生えるタイミングには個人差があることが指摘されています。
この時期の子どもは、物語の中に自分を重ねるようになるそうです。メタ認知(自分はこれが得意、これはちょっと難しいな、などと自覚する力)も芽生え始めます。
Krashen(2004, The Power of Reading)は、読書習慣の形成において「強制」が逆効果になると繰り返し指摘しています。読まされた本ではなく、自分で選んだ本が読書習慣の起点になるそうです。
Wolf(2007, Proust and the Squid)は、読書経験の蓄積が脳の神経ネットワーク形成に影響すると指摘しています。読み聞かせを続けるメリットが認知科学的に裏付けられています。
ことばかけのポイント
「読みなさい」より「読みたくなる環境」を作ってあげる、親自身が読んでいる姿を見せる。Krashenによれば、「子どもは周りの大人が読んでいるのを見ると、もっと本を読む」そうです。
子どもが読んだ本について、感想を聞いてみましょう。「どの場面がいちばん好き?」「自分だったらどうする?」。感想に正解はないと思います。「そう思ったんだね」と受け止めることが、本について話す習慣の入り口になっていきます。
絵日記や手紙など「書く遊び」にもつなげやすい時期ですね。祖父母への手紙、サンタへの手紙、お友達への招待状。目的があると、「書く」は子どもを駆り立てるのではないでしょうか。
絵本の選び方
章のある「読み物」への橋渡しになる絵本がおすすめです。文字が読める子向けの「自分で読む用」、まだ読み聞かせを楽しみたい子向けの「少し難しめの読み聞かせ用」の2種類を用意すれば、どちらの子にも対応できますね。知的好奇心を刺激するテーマ(宇宙、恐竜、実験、歴史上の人物など)が刺さってくる時期でもあるようです。
読み聞かせのコツ
「この先、主人公はどうすると思う?」、子どもに予想させてみましょう。答えが物語と違っていても、「そういう展開もおもしろいね。じゃあ実際はどうなるか、読んでみよう」と続ければいいですね。
別の結末を一緒に考えてみましょう。「もし○○が違う選択をしていたら、どうなってたかな?」。推論力と想像力の両方を使う問いかけになります。
読み聞かせと自力読みの併用もおすすめです。「この章はママが読むね。次の章は○○ちゃんが読んでみる?」。一人で読む時間と、読んでもらう時間の両方があることで、読書がストレスにならないのではないでしょうか。
Trelease, J., & Giorgis, C.(2019, Jim Trelease’s Read-Aloud Handbook)では、読み聞かせに卒業はないことが繰り返し言及されています。自分で読めるようになった後も、大人に読んでもらう時間は子どもにとって特別な体験であり続けるのではないでしょうか。
エルマーのぼうけん/ルース・スタイルス・ガネット 著/ 渡辺茂男 訳 / 福音館書店(1963)
絵本から「読み物」への架け橋として定番の1冊です。章立てになっているが、1章が短く、毎晩1章ずつ読むのに向いています。エルマーが知恵と道具で動物たちの問題を解決していく展開は、推論力に響くと思います。
100万回生きたねこ/佐野洋子 著/ 講談社(1977)
何度死んでも生き返るねこが、最後に「本当に大切なもの」を見つけるお話です。抽象的なテーマを扱っており、子どもが「これってどういう意味?」と考え始めると思います。いつ読むかで、感じることが変わるのではないでしょうか。繰り返し読む価値がある1冊です。
ステージ早見表
ちょっと長くなりましたので、お子さんの成長に合わせて何度でも見返せるよう1つにまとめました。
よくある疑問
Q. 結局どのステージなのか?わからない
今のステージに合った絵本でしっかりと楽しめることが、ちょっと背伸びをして、難しい絵本を押し付けてしまうよりも良いのではないかと思います。お子さんのステージに合わせて、ことばの発達を後押ししてあげる、そんなスタンスで考えてあげるとよいのではないでしょうか。
とはいっても、どのステージかくっきりとわからないこともあると思います。そんなときは、それぞれのステージを試してあげましょう。
Q. 同じ絵本を何度も読んで欲しいとせがまれる
同じ絵本を繰り返すことで、子どもは展開を予測でき、先に言えた!!という喜びを味わうことができます。ある意味とっても自然なことなのではないでしょうか。まさに言語のパターンを習得できたと喜んでいいと思います。もしかしたら、大人の方が先に飽きちゃうかもしれませんが、付き合ってあげましょう。
Q. あんまり絵本を好きにならない。。。
Krashen(2004)の研究では、強制は読書習慣の形成を妨げると指摘されています。絵本を嫌がるときは、しかけ絵本や布絵本など「触って遊べる」ものから入る、読み聞かせより一緒に絵を見ながら話す、子どもが好きな乗り物や動物が出てくるテーマを選ぶ、といったように入り口を変えてみましょう。
Q. 読み聞かせは何歳まで?
読み聞かせに卒業はないと言われています(前出:Trelease, J., & Giorgis, C.)。小学校低学年では、自分で読めるレベルより高い語彙・文法の本を読んでもらうことで、言語理解の幅が広がりますね。「もう読んでもらわなくてもいい」と子ども自身が言い出すまで続けてよいのではないでしょうか。
私も小学校3年生くらいまで、毎晩父親や母親のところに絵本を持っていき、読み聞かせをして欲しいとねだっていたそうです。
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この記事で参照した研究・文献
- Hart, B., & Risley, T. R. (1995). Meaningful Differences in the Everyday Experience of Young American Children. Paul H. Brookes Publishing.
- Krashen, S. D. (2004). The Power of Reading: Insights from the Research (2nd ed.). Libraries Unlimited.
- Kuhl, P. K. (2004). Early language acquisition: Cracking the speech code. Nature Reviews Neuroscience, 5(11), 831–843.
- Mar, R. A., Oatley, K., Hirsh, J., dela Paz, J., & Peterson, J. B. (2006). Bookworms versus nerds. Journal of Research in Personality, 40(5), 694–712.
- Massaro, D. W. (2015). Two different communication genres and implications for vocabulary development and learning to read. Journal of Literacy Research, 47(4), 505–527.
- Pepper, J., & Weitzman, E. (2004). It Takes Two to Talk. Hanen Centre.
- Prizant, B. M., Wetherby, A. M., Rubin, E., Laurent, A. C., & Rydell, P. J. (2006). The SCERTS Model. Paul H. Brookes Publishing.
- Rogers, S. J., & Dawson, G. (2010). Early Start Denver Model for Young Children with Autism. Guilford Press.
- Trelease, J., & Giorgis, C. (2019). Jim Trelease’s Read-Aloud Handbook (8th ed.). Penguin Books.
- Vygotsky, L. S. (1978). Mind in Society: The Development of Higher Psychological Processes. Harvard University Press. Wolf, M. (2007). Proust and the Squid: The Story and Science of the Reading Brain. HarperCollins.
