今日も大怪獣だった。。。「でも、何が気に入らなかったんだろう??」 ネットやSNSによると、2歳頃から始まるらしい子供のイヤイヤ期、そんなイヤイヤ期へのふとした疑問を調べてみました。
発達科学研究の知見では、イヤイヤ期の特性は、(親の)育て方の問題でも(子どもの)わがままでもなく、脳がまだまだ発達途上の時期に、感情処理だけが先に進んでいるのがその正体なんだそうです。学術的な表現だと癇癪と言われるイヤイヤ期って一体なんなんだろう?を調べてみました。
- なぜ2〜3歳は癇癪が多いの? 発達科学が教える本当の理由
- イヤイヤ期の子どもに向けた絵本の条件
- いやだいやだ(せなけいこ 作・絵、福音館書店、1969年)
- おこりたくなったらやってみて!(オーレリー・シアン・ショウ・シーヌ 作・絵 垣内磯子訳、主婦の友社、2019年)
- カラーモンスター きもちはなにいろ?(アナ・レナス 作・絵、お大友剛訳、永岡書店、2020年)
- たくさんのきもち(かしわらあきお 作・絵、渡邊直美監修、NTT印刷、2022年)
- おかおをポン!(かしわらあきお 作・絵、渡邊直美・小林哲生 監修、NTT印刷・サンクチュアリ出版、2023年)
- 関連記事:イヤイヤ期のタイプ別に知っておきたいこと
- こんなことある?よくある?疑問
- あわせて読みたい記事
- 参考文献
なぜ2〜3歳は癇癪が多いの? 発達科学が教える本当の理由
脳の前頭前野は、人間の感情コントロールを司る部位ですが、脳の中で最も発達が遅い部位で20代まで成熟が続くそうです。一方、感情そのものを生み出す扁桃体は、乳児期からフル稼働していて、このギャップが最も大きくなる時期に、イヤイヤ期の特徴である癇癪のピークが重なるそうです。(そう考えると、大人だってまだまだ完全じゃないのに、子どもに怒っちゃったこと、反省です。。。)
発達心理学者Claire B. Kopp(1989)は、幼児の感情調整能力が段階的に発達することを示しています。
生後6ヶ月くらいまでは泣くことしかできませんが、1・2歳で注意そらしが使えるようになり、2・3歳になると言語を使った感情の調整が始まります。2・3歳は、ちょうど「言葉で気持ちを伝える力」が発達し始める時期であり、それが追いついてくるまでの間は、感情を身体的爆発(叫ぶ・叩く・倒れる)で表現するとのことです。
青山学院大学の坂上裕子先生(2024年)も著書である『子どものこころの発達がよく分かる本』(講談社)で、欲求の強まりと言語化回路が間に合わないことの組み合わせがイヤイヤ期の感情爆発を生むことを指摘されています。
イヤイヤ期の子どもに向けた絵本の条件
「感情の調整」、この観点から、イヤイヤ期の子どもに有効な絵本には、以下のような特徴が指摘されています。
・主人公が感情をそのまま表現するシーンがある
怒ってはダメ!!ではなく、怒っている姿そのものを描く絵本ですね。
・ その感情が受け止められる展開がある
感情を抑え込もうとするのではなく、受け入れるお話です。
・感情に「名前」をつける構成になっている
感情のラベリングの練習になるそうです。
NTTコミュニケーション科学基礎研究所の渡邊直美さんによると、感情語をたくさん知っている子どもほど、自分の感情を言語化しやすくなるそうです。「怒り」しか言えない子どもは、「くやしい」「さびしい」「嫉妬」などといったある意味似たようなニュアンスの感情を全て「怒り」として爆発させてしまう。大人だってそうですよね。。。感情の語彙を増やすことが、子どもの成長につながるんだと思います。
いやだいやだ(せなけいこ 作・絵、福音館書店、1969年)
せなけいこさんの貼り絵が持ってる独特の温かみがほっこりする絵本です。主人公のルルちゃんは何でも「いやだいやだ」で、ページをめくるたびに「いやだ!」と声に出したくなるような作りになっています。
感情のラベリングの入り口として、「いやだ」という言葉を声に出すことで、感情ラベリング練習の最初の一歩に最適な絵本だと思います。ルルちゃんの気持ちを「怒ってる」「嫌な気持ち」と言葉にして子どもと対話することで、そのまま感情の語彙の習得にもつなげられます。
読み聞かせのタイミングは癇癪が収まった後を狙っています。「ルルちゃんは今どんな気持ちかな?」と一言問いかけてみて、「いやな気持ち」と答えてくれたら、それだけで平和な時間が訪れる気がします。
おこりたくなったらやってみて!(オーレリー・シアン・ショウ・シーヌ 作・絵 垣内磯子訳、主婦の友社、2019年)
フランス発の感情マネジメント絵本です。ユニコーンのガストンが怒りを感じたとき、一緒に呼吸法や体を動かしてみようと誘ってくれる参加型絵本です。怒りの感情を「なくす」のではなく「上手に扱う」方法を教えるアプローチは、アンガーマネジメントの研究で有効性が示されていますが、子どもも呼吸法を通じて、興奮状態を落ち着かせることができることを実際に真似しながら、スキルを身につける絵本です。
癇癪を起こしているときではなく、これ覚えておこうね!!と一緒に「ふーっ」と練習してみるのがおすすめです。
カラーモンスター きもちはなにいろ?(アナ・レナス 作・絵、お大友剛訳、永岡書店、2020年)
スペイン発、全世界600万部超えの大人気絵本です。感情がごちゃごちゃになってしまったカラーモンスターが、うれしい・かなしい・いかり・ふあん・おだやかの5つの気持ちを色分けしながら整理していきます。
感情を「色」で対応させる手法は、感情の外在化(externalization)という心理学の技法に近い発想ですね。「怒っている」ではなく「赤いモンスターがきたぞ!」と捉えてみると、感情に飲み込まれず距離を置くことができる仕掛けです。5つの感情を別のカラーリングすることは、いろんな感情があることを学べる練習にもつながりそうです。
「今日どんな色のきもちかな?」という問いかけを通じて、難しい感情語を使うことはできなくても、「なんか赤い感じ」と、色を通じて感情を外に出す、そんな会話が自然と日常会話に取り入れられるとても素敵な絵本です。
たくさんのきもち(かしわらあきお 作・絵、渡邊直美監修、NTT印刷、2022年)
NTTコミュニケーション科学基礎研究所が研究データをベースに選び出した「幼児がよく使う気持ちの言葉50語」を収録した絵本です。すき、ありがとう、びっくり、きらい、いや、どきどき・・・そんな言葉達が、イラストと一緒に並んでいます。
毎日1つの言葉を選んで、「今日はこの気持ちあったかな?」と話しかけてみると良いかもしれません。自然と感情の語彙を広げていける絵本です。
おかおをポン!(かしわらあきお 作・絵、渡邊直美・小林哲生 監修、NTT印刷・サンクチュアリ出版、2023年)
NTTコミュニケーション科学基礎研究所の研究をもとに制作された、表情と感情語を組み合わせて学ぶ絵本です。いろいろな表情と「うれしい」「かなしい」といった感情語彙を遊びながら体験できる構成になっています。
感情語彙の取得は、語彙爆発と同じ時期に起きるとされていることから、イヤイヤ期が始まる前でも様々な感情語彙を耳にしておくことが、感情ラベリングの土台になるのかなと思います。
「これはどんな顔かな?」「うれしそうだね!」と声をかけながら、一緒に表情を真似してみるのはどうでしょう。表情を真似するミラーリングは、感情認識の発達を促すと言われています。イヤイヤ期が始まってからでも、それより前からでもおすすめです。
関連記事:イヤイヤ期のタイプ別に知っておきたいこと
子どものイヤイヤ期は、2歳と4歳頃によく起こるとされており、調べてみると、発達的な意味合いも異なるようです。それぞれの気質的な背景を理解することも大事だと思います。(※今後、執筆予定です!)
・2歳と4歳のイヤイヤ期は、違うの?
こんなことある?よくある?疑問
私自身や周囲から聞いたイヤイヤ期と絵本の向き合い方についてまとめてみました。
Q. 毎日読み聞かせる時間がない
A. 大切なのは、回数でも完璧にやることではなく、どこかで感情について話せる小さな時間を作ることかと思います。寝る前の3分で、感情語彙を1つでも口にできたら良い、そんな気持ちで取り組んでみてはどうでしょう。
Q. 絵本を読んでも癇癪が減らない
A. 絵本は「感情語彙を積み上げる種まき」みたいなものだと思います。焦らず「落ち着いている時間」に読んであげて、ふとしたときに子どもが感情と向き合うことができたら、きっと芽が出たんだと思います。
Q. 同じ絵本を何度も読みたがる
A. 繰り返し読みたがるのは、子どもにとって「重要な何か」を含んでいるサインなんだと思います。同じ物語を繰り返し聞くことで、感情の言葉が子どもの記憶にも定着しやすくなるはずです。
イヤイヤ期は、脳が正しく育っている証拠なんだということ、感情を言語化する体験が必要な子どもの成長を手助けするため、絵本を日常の中に自然に組み込むことができたら、とても素敵なことですね。
あわせて読みたい記事


参考文献
Kopp, C. B. (1989). Regulation of distress and negative emotions: A development view. Developmental Psychology, 25, 343-354.
Kopp, C. B. (1992). Emotional distress and control in young children. In N. Eisenberg & R. A. Fabes (Eds.), Emotion and its regulation in early development. New Directions for Child Development, No. 55 (41-56). San Franciscro: Jossey-Bass.
坂上裕子『子どものこころの発達がよくわかる本』講談社(2024)
渡邊直美(NTTコミュニケーション科学基礎研究所)感情語・表情認識と幼児のコミュニケーション発達に関する研究

